<ローカル・マニフェスト講演会講演録><ローカル・マニフェスト講演会>(文責 山路) 1 日 時 平成17年3月18日(金)19時~21時半 2 場 所 名古屋市公会堂大ホール 3 内 容 (1) 主旨説明 ローカル・マニフェスト推進首長連盟代表世話人 犬山市長 石田芳弘氏 ・政党のパーティー・マニフェストと首長のローカル・マニフェスト がある。ローカル・マニフェストは政策中心に選挙文化を変えていく ムーブメントである。 ・ローカル・マニフェストは実験的に2年前の統一地方選挙で行われた。 私自身何回も選挙をやってきながら公約について、不確実なところ があった。それは当選しても行政と公約がリンクしないからだ。 ・北川前三重県知事の政治手法は絶えず検証していた。 ・ローカル・マニフェスト首長連盟を結成し、選挙のときは必ずマニフ ェストを書こうということになった。 ・ムーブメントは必ず公開討論会とセットでなければならない。米国 では大統領選挙のとき、必ず公開討論会が開かれる。 ・公開討論会には公正な行事役がいる。それをリンカーン・フォーラム と青年会議所が務めている。 ・自治体の予算は膨大な事業があることもあり、複雑である。職員の 積み上げ方式では抜本的な改革ができない。その理論付けにローカル・ マニフェストがなる。 ・行政改革は行政だけではなく、政治優先でなければならない。行政の 担当者は計画づくりが仕事であるが、計画はできた途端死んでしまう。 ・選挙のときのマニフェストで計画を活かす、マニフェスト・サイクルを まわしていかなければならない。 (2) 基調講演 早稲田大学大学院公共経営研究科教授 早稲田大学マニフェスト 研究所長 北川 正恭氏 ・今年は多分総選挙はない。合併特例法、特例債により3,200の市町村が 2,000になる。400を超える首長選挙でマニフェストを提唱してもらおうと 思っている。 ・2000年4月の地方分権一括法により、国、都道府県、市町村は上下主従 の関係から対等平等の関係になった。かつて機関委任事務では地方自治体 は国の下請け機関とされ、その割合は県で8割、市町村で4割を占めた。 ・地方自治法は、憲法と同時に発布されたが、県は国の営業所、市町村は 支店のような役割であった。 ・管理ではイノベーションは起きない。前例踏襲と指示待ちにより東京だ けが栄えた。 ・自治体の首長も経営者として自立し、最小の経費で最大の効果を挙げな ければならない。分権一括法がマニフェストを書かせたとも言える。それ までは誰が首長であろうと大差なかった。むしろ変わったことをすると国 からしかられた。 ・これまでの選挙は、地盤、看板、かばんが必須とされた。英国では個人 が持ち出せる選挙資金は130万円までとされている。英国の銀行員は選挙 に出て落選すれば、また、元に戻れる。 ・日本でも県庁職員が県会議員選挙に出て落選したら、また、職員に戻れる 制度ができればいい。選挙資金に1億円が必要で家屋敷をすべて抵当に入れ なければならないのではリスクが大きすぎて優秀な人材が選挙に出れない。 ・山形県では各党が推薦した現職に対して斎藤さんという人が若い人が出て 当選した。地盤、看板、かばんにマニフェストが勝ったと言える。 ・英国では、国会議員は官僚に接触するのを禁止されている。日本の政治家 は選挙民の利益の最大化が使命であり、選挙民とはパトロンとクライアント の関係であった。 ・英国では、また、政党助成金は野党にしかいかない。これは「政権交替が ないところには民主主義は機能しない」との考えによる。 ・自治体で規模の大小に関わらず、三役や議会が必要かということもある。 350万の横浜市と2,000人の人口の町の統治の仕方が同じでいいかということ を考える必要がある。 ・学校教育も変えていくべきである。学校に全部任せるのではなく、親も 関わらなければならない。4年後に始める裁判員制度では一般人も司法に 関わり、刑事事件を裁くことに加わることになる。 ・公と私の関係を考えていく必要がある。役人に全部任せておいた結果が 「社会保険事務所」であり、市役所に全部任せていた結果が「大阪市役所」 である。このことは任せておいた側にも責任がある。 ・2007年問題がある。2006年には団塊の世代が生産年齢から消費年齢にな る。 ・首長、職員も日常、努力しているのは知っているが、それだけでは足り ない。まず帽子の大きさを決め、頭をそれに合わせる。当然、痛みが伴う がかぶらなければならない。 ・権力に正当性を付与するのは選挙しかない。選挙の前に事後検証可能な ものを掲示する。これまでの公約では増やすことしか約束しなかったが、 マニフェストでは切るところ、減らすことも約束する。 ・「いつまでも青臭いことを言って」と言われることがあるが、あなたの 胡散臭い話に比べればましだと言っている。 4 質 疑 問1)日本では改革を言い出すのは自治体自身の場合が多い。このことを意識 が高いとみるか、それとも自分で言い出すから不徹底で何回も同じことを 繰り返すことになると捉えるかは意見の分かれるところであるが、税の非 報償性の問題があるとしても、ノイジー・マイノロティではなく、サイレ ント・マジョリティを巻き込んだ改革にするにはマニフェストが役立つの か。(山路) 答1)by the peopleの問題だと思う。団体自治ではなく、住民自治が本来 の自治である。税金のことを政治家にだけに任せておいていいのか。大事な 教育のことを学校だけに任せておいていいのか。ノイジー・マイノリティ だけに配慮してきた政治をサイレント・マジョリティと共に変えなければな らない。(北川教授) 問2)米の経済学者チャールズ・ティボーは「足による投票」を説いた。すな わち、住民、企業が自分にとって好ましいサービスを提供してくれる自治体 を選ぶことで自治体間に競争メカニズムが発生するというものである。これ が日本でも起こる可能性について聞きたい。(山路) 答2)足による投票については、知事のときに「向えにもうひとつ県庁ができて そこは24時間営業でサービスもいいところであるということを想定せよ」 言ってきた。日本でも足による投票が起こるのではないか。 5 感 想 石田犬山市長については「君も市長になれ」(全国書籍出版)という著書 を読んでいましたが、お話を聞くのははじめてでした。ユーモアあふれる お話ぶりと情報公開を徹底し、教育に力を入れる真摯な政治姿勢に共感しま した。 北川教授はあいかわらず迫力たっぷりの講演で、パネルでもマイクをもっ ている時間が一番長かったと思います。 かつてのトップにかねてから聞きたかったことを質問したら、「もっと発 言したかったので質問してもらってよかった」と言って喜んで答えていただ きました。(以上) |